Contextual AI(コンテクチュアルエーアイ) ■技術の分野:基盤AI ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2023年 ■社員数:約10名(2024年4月現在:LinkedInより) ■所在地:Palo Alto, CA ■URL:https://contextual.ai/ ■主な経営陣: Douwe Kiela氏(共同設立者およびCEO)、Amanpreet Singh氏(共同設立者およびCTO)他およそ10名の社員。 ■最近の資金調達状況: 2023年6月、ステルスモードから逸脱し、Bain Capital Ventures(BCV)の牽引によりLightspeed、Greycroftをはじめとする多数のエンジェル投資家が参加したシードラウンドで2,000万ドルを調達。 ■事業内容および技術の特長: Facebook AI Research(FAIR)とHugging Faceの出身者らが共同で設立した企業向けAIの開発企業。両者はそれぞれMeta Platforms の FAIR におけるヘイトスピーチ(人種、出身国、宗教、性的指向、性別、障害などに基づいて個人または集団を攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動のこと)や Facebook で不正販売の商品を検出するシステム、LLMの開発に携わっていた。同社開発の「ASI:Artificial Specialized Intelligence」はLLM を活用したい企業が抱える様々な課題解決に焦点を当てた技術である。既存のLLMに関しては、将来における革新性に注目が寄せられている一方、捏造による結果を生成したり、知識ベースの変更が複雑であるなどの制限があることから、企業によってはLLMの導入を躊躇するところもある。Meta社でRAG(retrieval augmented generation)の研究活動を主導した同社CEOのKiela氏は、自身の経験を生かし企業向けのテキスト生成AIを考案した。RAGはLLMに外部ソース(ファイルやWebページ等)を付加させLLMの性能向上を図るもの。インクアリに対しては外部ソースから関連するデータを検索し、そのデータをインクアリとパッケージ化してLLMに供給する。その結果、文脈を考慮した応答が生成されることから、従来のLLMよりも精度と信頼度が引き上げられる。RAGはLLMのカスタマイズやアトリビューションの問題に対応することにより、反復学習や微調整を回避しながら性能向上が期待できる。小規模かつ効率的な言語モデルの開発が実現され、レイテンシーとコスト削減を図るなど企業の要求を満たす統合型のソリューション提供が可能となる。同社によると、パイロットプロジェクトの実施に関して、現在フォーチュン500社に挙げられる企業と話し合いの段階にある。現時点での競合にはLlamaIndex社などがある。 ArteraAI(アーテラエーアイ) ■技術の分野:メディカルAI ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2023年 ■社員数:101~250名(2024年2月現在:LinkedInより) ■所在地:108 1st St, Los Altos, CA ■URL:https://artera.ai/ ■主な経営陣: Andre Esteva氏(共同設立者およびCEO)、Felix Feng氏(共同設立者)、Tim Showalter氏(Chief Medical Officer)、Adriana Vela氏(VP of Medical Affairs & Operations)、Nathan Silberman氏(VP of Machine Learning)他。 ■最近の資金調達状況: 2024年2月、Prosperity7 Ventures、シンガポールを拠点とするEDBI、Walden Catalyst Ventures、Wilson Sonsini Goodrich & Rosati、Trium Ventures等の投資機関に加えNavin Chaddha、Rajiv Khemani (AISpace VC)、Andrew & Elliott Tan(A&E Investment LLC)の参加により追加で2000万ドルの資金を調達。最新ラウンドによる投資は海外市場への参入や研究開発活動の推進に運用される方針。これを機に、設立から一年未満の間で総額にして1億1000万ドルの投資を確保したことになる。 ■事業内容および技術の特長: ArteraAIではMultimodal Artificial Intelligence(MMAI)を利用し、癌の可能性を予見するための試験サービスを開発。現在提供しているArteraAI Prostate Testでは、患者の生体検査から抽出したデジタル画像と臨床データを統合分析させ、個々人に適切な治療方法を高い正確度で予測する。男性の間で発症率の高い局所前立腺がんに対応した業界初のAI技術として注目を集めており、医師における治療手段の意思決定に役立てられている。同社技術におけるメリットは、医師が患者ごとに最適な治療方法を提案することが可能になり、治療効果を最大限に引き上げると共に、不要な治療や投薬による副作用のリスクを軽減できる点にある。一方、こうしたアプローチにおいては、個人データにおけるプライバシー保護やAIの判断基準の透明性に対する懸念が存在する他、医療現場における当事者の教育、AIの判断を補完するための臨床データの充実等が不可欠となる。長期的な視点で見れば、こうしたAI技術の進展と普及により、様々な癌治療の様相が変革し、幅広い範囲で最適な治療方法が提供されることになる。治療の迅速な開始や効果向上はもとより、それに関連した医療費の削減も期待できる。現在は癌を対象としているが、将来的には他の疾患にも応用できる可能性がある。 Kumo.AI(クモドットエーアイ) ■技術の分野:SaaS AIプラットフォーム ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2021年 ■社員数:約30名(2023年12月現在:LinkedInより) ■所在地:357 Castro Street, Suite 200 Mountain View, CA, 94041 ■URL:https://kumo.ai ■主な経営陣: Vanja Josifovski氏(共同設立者およびCEO)、Jure Leskovec 氏(共同設立者およびChief Scientist)、Hema Raghavan氏(共同設立者およびVP of Engineering)、Tin-Yun Ho氏(VP of Product)他。 ■最近の資金調達状況: 2022年4月、シリーズAの投資ラウンドで1850万ドルを調達。続く同年9月1800万のシリーズBラウンドではSequoia CapitalのリードによりA Capital、SV Angel、Ron Conway、Michael Ovitz、Frank Slootman、Kevin Hartz、Clement Delangue、Michael Stoppelman等多数の投資家が参加した結果、1800万ドルの出資を受けたと発表。現在、同社の評価額は1億ドルに到達したとされている。同社は、最新ラウンドの調達資金は、雇用者の増加、法人への導入拡大、技術とサービスの向上に向けた研究開発活動に運用していく方針。 ■事業内容および技術の特長: スタンフォード大学の教授であったJosifovsks氏が主導し、ドイツのドルトムント大学との共同研究で開発された「グラフ・ニューラル・ネットワーク」では、不正検知や消費者行動、マーケティング戦略に関わるデータを複雑なグラフネットワークとして見なし、予測するための機械学習を目的とする。同社では、このネットワークの学習に対応するオープンソースツール「PyG」を開発。リソース不足で独自ツールの開発に手が回らない大手IT企業でも、PyGを基盤としたKumoのソフトウェアを活用することで、ビジネスデータを利用した複雑な予測モデルを簡単に構築することが可能になる。同社によると、このPyGは本来、データアナリストやデータサイエンティストを対象にデザインされたものであるが、簡素性が高いためこうした専門知識を持たない社員でも利用できる。同社より遥かに規模の大きいDatabricks、DataRobot、Dataiku等は一足早くデータサイエンスの収益化に成功しているが、Kumoでは差別化を図りながらこれらの企業と競合としていくことが予想される。 Mitra Chem(ミトラケム) ■技術の分野:リチウムイオン電池 ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2021年 ■社員数:11名~50名(2023年11月現在:LinkedInより) ■所在地:1245 Terra Bella Ave, Mountain View, CA 94043 ■URL:https://mitrachem.com/ ■主な経営陣: Vivas Kumar氏(共同設立者およびCEO)、Chirranjeevi Gopal 氏(共同設立者およびCTO)、William Chueh 氏(共同設立者およびChief Scientific Advisor)他。 ■最近の資金調達状況: シリーズAの投資ラウンドを2021年11月に完了させ、続く2023年7月のベンチャーラウンドを確保した後、同年8月にはゼネラルモーターズが牽引する シリーズB(総額6,000万ドル)ではその初回投資に当たる4,000万ドルを調達したと公表。 ■最近の資金調達状 2021年、シリコンバレーで起業されたMitra Chemでは独自の AI機械学習アルゴリズムを利用し、輸送をはじめ家電、住宅、商業、グリッドスケール蓄電など幅広い用途におけるLFP電池向けの正極材料を開発。LFP電池に比べエネルギー密度を遥かに引き上げることが可能な高容量かつ低コスト次世代正極材用に取り組んでいる。同社の鉄を利用した正極製品は、近年、北米におけるリチウムイオン電池メーカー各社が直面するニッケルやコバルト等の元素利用に伴う供給不足、採掘の将来性懸念に対する課題への対応策として考案されたもの。Mitra Chem製品における最大のメリットは、研究活動から実際の市場展開までの期間を9割以上も短縮できる点にある。さらに同社は鉄を利用した正極メーカーとしては米国内で唯一の企業であるため、国内生産によるEVの購入者らがインフレ削減法の適用された税額控除の対象となる可能性も示唆されている。 Andes Ag(アンデス アグ) ■技術の分野:バイオテック ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2018年 ■社員数:11名~50名(2023年8月現在:LinkedInより) ■所在地:1210 Marina Village Pkwy Alameda, CA 94501 ■URL:https://www.andes.bio/ ■主な経営陣 Gonzalo Fuenzalida氏(共同設立者およびCEO)、Tania Timmermann氏(共同設立者およびCTO)、Bjorn Traag氏(CSO)、Anupam Chowdhury氏(Head of Technology)他。 ■最近の資金調達状 2023年3月、シリーズAの投資ラウンドで3000万ドルを調達。今回のラウンドにLeaps by Bayer、Cavallo Ventures、Germin8、Yamaha Motor Sustainability Fundほか複数の投資機関が参加。これを契機に調達資金の総額はおよそ5600万ドルに達した。 ■事業および技術概要 自然環境におけるC02の削減を目的に、有益な微生物技術の研究に取り組むスタートアップ企業。2018年、2人の共同設立者が起業したAndes Ag(以下Andes)では、広大な農地に存在する微生物を使って大気中のCO2 を採集し、ミネラルに転換させることでグリーンハウスのガス容量削減を図る研究活動を展開してきた。同社では、トウモロコシや小麦など植物の種子と微生物を効率的に融合させ、これらを土壌に追加。ここで利用された微生物は、種子の根と共に成長を図りながらCO2におけるミネラル転換を加速化させる。また、降雨時には、これらのミネラルが土壌の深層部へと自然に沈殿することで、土壌の栄養成分が向上される他、排水を助長しながら、植物にありがちな病気の予防にも繋がる。さらに、実施される土壌調査によって検証されたCO2削減によるカーボンクレジットを生成することが可能になる。 ■環境問題への対応に関連したバイオテック企業の展望: 米国の陸地に関しては、約52%が農業に特化している事実を踏まえ、近年においては環境科学の領域へ強い関心を示す投資家が増えている。中でも、Andesが展開しているCO2の削減を目的としたバイオテックの領域はシードステージの投資として殊に注目を集めている。昨年の例を挙げると、同分野のスタートアップ企業Lithos Carbonでは、630万ドルの出資を受けている。Andesの技術における最大の特長は、種子に微生物を融合させるといった非常に簡素な手法を展開することで、農家が従来通りの作業を全く変える必要がない点にある。農家にとってはこうして簡単に利用でき、成果も期待できることから、今後、幅広く普及していく可能性が考慮される。 Instabase(インスタベース) ■技術の分野:AIソフト ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2015年 ■社員数:約350名(2023年6月現在:LinkedInより) ■所在地:855 Oak Grove Ave, STE 200, Menlo Park, CA 94402 ■URL:https://instabase.com/ ■主な経営陣 Anant Bhardwaj氏(CEO)、Sumeet Gajri氏(CSO)、Steve Jenner氏(CCO)、Clements Mewald氏(Head of Product Management)他。 ■最近の資金調達状況 2023年6月、ラウンドCで4500万ドルの出資を調達。Tribe Capitalの主導による同ラウンドにはAndreessen Horowitz、New Enterprise Associates、Spark Capitalも参加した。これにより、総額で1億7700万ドルの資金を確保したことになる。また、今回の投資ラウンドを契機に、同社における評価額はそれまでの10億ドルから倍増の20億に引き上げられた。 ■事業および技術概要 Bhardwaj氏がMITでの博士課程に在籍していた2015年、企業におけるアプリとデータを迅速に構築・展開させる市場にビプラットフォームにビジネス機会を見出し同社を設立。同社技術では、大規模なコーパスファイルのクエリーを通じて、学術文書や法文書、財務書類など企業の業務で利用可能な書類やデータの一括処理を実行する。この他、類似した種類の文書を解析するためワークフロー展開用のツールも搭載。導入企業では、収支手続きを自動化したり、認証処理をはじめ請求処理や受領の承認等の確認を行うこともできる。現在、競合には大手のGoogle Cloud、Amazon Web Services、Azureが存在するが、上述のBhardwaj氏によると、同社技術では時間、コスト、労力を余儀なくされるデータサイエンスの仕事を最小限に抑える点で差別化を図っている。同社の報告によると、現在、米国内トップ5行の銀行のうち4行で導入実績がある。幅広い業界で利用できるが、中でも大量の書類手続きが必要な政府機関やヘルスケア、病院、保険、消費者向けパッケージ商品等の産業で有効活用されている。 Magic Ai(マジックエーアイ) ■技術の分野:AIソフト ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2022年3月 ■社員数:10名(2023年4月現在:LinkedInより) ■所在地:12th Floor, 580 California St. San Francisco, CA 94104 ■URL:https://magic.dev/ ■主な経営陣 Eric Steinberger氏(CEO)、Sebastian De Ro氏(CTO)、Stefan Matar氏、Manuel Wolkowitsch氏、Marco Stephan氏(いずれもエンジニア)、Sophia Wisdom氏、Arun Kumar氏(いずれも機械学習エンジニア) ■最近の資金調達状況 2022年の夏にシードラウンドで500万ドルを確保してから間もなく、今年の2月にはシリーズAで2300万ドルの出資を受けた。今回の大型出資にはCapitalG (AlphabetのIndependent Growth Fund)、Nat Friedman (GitHu前CEOおよびGithub Copilot共同創業者)、Mehdi Ghissassi氏 (Google ResearchのDirector of Product)、Bryan Pellegrino (LayerZero)、Arthur Breitman (Tezos)、10x Founders、William Tunstall-Pedoe (Unlikely AI)、Adam Jafer & Fredrik Hjelm (Voi)、Klaudius Kalcher & Roland Boubela (MostlyAI)など多数の投資家らが参加している。 ■事業および技術概要 サンフランシスコを拠点に2022年に設立されたMagicでは、ソフトエンジニアのいわゆる「同僚」としての役割を果たすAIを開発。人間のエンジニアのように自然言語でコミュニケーションを図ると同時に、ユーザとのコラボレーションを通じて複雑なコード転換を目指すものである。大規模な言語モデルに基づき、AIのペアプログラマーの様な働きをしながら、タスクやユーザのコンテクストを継続的に理解し、学習することが可能。同社の開発技術はソフトウェアエンジニアにとって、より高質な製品を短時間で構築する上で役立つものと期待されている。ここ数年間において、ソフトウェア開発者への報酬は平均で年間約15万ドルに達しているが、調査会社IDCによると2025年までに有能な人材の数は400万人を下回るものと見られている。こうした現状を受け、世界全般においては、ソフトウェア開発での生産性向上と効率化を目指したツールへの関心が以前にも増して高揚している。同社に対する競合としては、現在のところAisera、Arize AI、Curai Health等が挙げられる。 Genesis Therapeutics(ジェネシス セラピューティックス) ■技術の分野:AI/バイオテック ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2019年11月 ■社員数:11~55名(2023年2月現在:LinkedInより) ■所在地:1860 EL CAMINO REAL STE 400. BURLINGAME CA 94010 ■URL:www.genesistherapeutics.ai/ ■主な経営陣 Evan Feinberg氏(共同設立者およびCEO)Will Mccarthy氏(Chief Business Officer)、Donna Tran氏(Vice President of Finance)、Stephen Dannsh氏(Head of Biology)、Ben Sklaroff氏(共同設立者およびCTO)他。 ■最近の資金調達状況 2019年11月、Andreessen HorowitzおよびFelicis Venturesよりシードラウンドで410万ドルを確保。翌年2020年には、三回の投資ラウンドで次々に出資を受けた。特に、最新のシリーズAではシリコンバレーを主体とした13件の投資機関が参加した結果、5200万ドルを調達。この投資はAI技術の進展を目指すと同時に、新薬の発掘、開発に関するパイプラインの着手に向けて運用していく方針とされている。 ■事業および技術概要 Genesis Therapeuticsが開発したDynamic PotentialNetと複数のNovel Neural Networkアルゴリズムでは、重度の衰弱性障害を持った患者の治療を目的に、低分子薬剤候補の発見と開発を短期間で実現させることが可能。スタンフォード大学内での研究プロジェクトが基盤となり、独自の分子AI技術を使ったスピンオフ企業として設立した。治療法の革新性を追求するため、厳選された外部企業とのパートナーシップ構築にも注力し、Eli LillyやGenentechとも提携している。競合にはCyclica、Gatehouse Bio、Anagenexをはじめとする複数の企業が存在しており、市場の競争力が伺える。 Spot.ai(スポットエーアイ) ■技術の分野:AIカメラシステム ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2021年 ■社員数:100名~250名(2022年11月現在:LinkedInより) ■所在地:Burlingame, CA ■URL:https://www.spotai.com ■主な経営陣 Tanuj Thapliyal氏(共同設立者およびCEO)、Rish Gupta氏(共同設立者およびVP of Product)、Sud Bhatija氏(共同設立者およびVP of Growth)他。 ■最近の資金調達状況 2022年11月に完了したシリーズBの投資ラウンドでは、Scale Venture Partnersをリードとし、過去にも出資してきたRedpoint VenturesやBessemer Venture Partners、新参のStepStone Group、Modern Venture Partnersも加わり4000万ドルを確保。2021年にステルスモードから逸脱した同社は、その間に調達した2200万ドルを含め総額6200万ドルの出資を受けている。 ■事業および技術概要 近年においては、職場や雇用者における安全性の確保を目的に、セキュリティカメラの導入や有効利用に関心を寄せる企業が増加傾向にある。Spot AIでは、既存のセキュリティカメラの品種や画質に関わらず、撮影された映像を解析し、キーワードや画像の内容で検索できるソフトウェアプラットフォームを開発。スタンフォード大学の学友であった3名のエンジニアが数年間に及ぶステルスモードでの研究開発を経て2021年に設立した。企業各社では建物の入出口や工場等の施設内、キャンパス環境等で人物の動作を捉える他、機械を設置した場所や部屋など人物や物体の動きが無い箇所を記録するため膨大なカメラを設置するところが多い。しかし、これらのカメラ技術は導入してから年数を経たものが大半であり、低画質でインデックス化に対応していない他、履歴の古いものから消去されるため、必要な画像を簡単に抽出できない等のデメリットがある。同時に、セキュリティカメラの利用に際しては、個々人のプライバシー問題を慎重に考慮する必要性もある。同社CEOのTanuj Thapliyal氏は、セキュリティカメラを従来の監視目的にとどまらず、雇用者における安全と健康を確保しながら正常な業務を遂行するよう効果的かつ有効に利用する手段を追究。その結果、雇用者がセキュリティカメラに対し、監視されているといった概念から、有益なデータの記録としてのビデオインテリジェンスに変換していくことが期待できるとしている。 Spot AIシステムはビデオフィードの画質を向上させる5MP、IPベースのカメラセット(無償提供:契約終了後もユーザ側で保持可能)、配置された全てのカメラからの映像を記録し、搭載のAIチップでそれらのデータ処理・解析を行い、映像検索を可能にするネットワークレコーダー、映像に関するキーワード検索や映像フレームの作成、通知の受信に対応したダッシュボードで構成されている。現在、SpaceXや輸送会社のCheeseman、Mixt 、Northland Cold Storageを含む顧客ベースは17種の産業に渡り数百社を数えており、同社では、過去12か月間においては売上が5倍に増加したと報告している。 SailDrone(セイルドローン) ■技術の分野:自律型水上艇 ■ステータス:未公開企業 ■設立年:2012年 ■社員数:100名~250名(2022年8月現在:LinkedInより) ■所在地:1050 W. Tower Ave. Alameda, CA 94501 ■URL:https://www.saildrone.com ■主な経営陣 Richard Jenkins氏(設立者およびCEO)、Andrew Schultz氏(CTO)、Barak Ben-Gal氏(CFO)、Ted Grubb氏(Principal Software Engineer)、Eric Lindstrom氏(Chief Scientist)他。 ■最近の資金調達状況 2021年10月に完了したシリーズCラウンドでの資金を合わせ、設立以来総額1億8,950万ドルを獲得。同社への投資にはこれまでSocial CapitalやTribe Capitalをはじめとする16社の投資機関が参加している。同社によると、最新の調達資金に関しては、Saildroneのデータインサイトチームの拡充を図ると共に、市場展開へ取り組みに運用していく方針。 ■事業および技術概要 アメリカ海洋大気庁(NOAA)との提携関係を通じ、海洋ドローンを開発。風力と太陽光発電を利用した自律型の水上ビーグルの設計・製品展開する同社では、ハリケーンに関する科学情報の計測を目的に昨年12月、紅海において無人水上艇(USV:Uncrewed Surface Vehicles)の試用を開始した。同USVには風速70マイル、波高10フィートを超える程の過酷な天候環境でも運行が継続できるよう、耐久性の高いハリケーンウィングが搭載されている。具体的には厳しい海洋状況にある高緯度北極の氷縁から南洋に至るまで50万海里を超える距離を1万5千日以上に渡り自動航行したと報告されている。最近においては、ハリケーンサムの台風の目に飛び入り、貴重な科学測定を行うと同時に世界で初めてその様子を高解像度の動画撮影に成功。特にハリケーンによる人的および環境への被害を毎年被る米国においては、ハリケーンの発生に先立つ予測精度を引き上げ、急速に発達する物理プロセスを理解しながら事前対策を講じるためのデータ収集が年々、重要性を増してきている。同社技術の活用範囲は、気象情報向けの科学データに留まることなく、独自の機械学習により違法漁業や不法麻薬取引の取り締まり、海洋保護区の保護など法規制や国土安全保障を目的とした情報提供にも役立つものである。同社に対する競合にはDJI、 Cruise、Plotly等が考慮される。 |